放送法改正における「放送」の定義の回答はあったが信用できません

このエントリの要約:
総務省情報通信国際戦略局参事官は「新放送案ではプロバイダ経由のオープンなネットサービスであるニコ動やUstは放送法の対象外」と発言したらしいが、記載された法律の根拠もなく、立法的にも定義が困難な説明になっていて、新法との整合性も取れていません。ですからこの回答は信用出来ません。

こんな回答があったそうです。
文化通信社 編集局のtwitter http://twitter.com/bunkatsushin
http://twitter.com/bunkatsushin/status/13471447924

@kenbor 連絡遅れ申し訳ございません。先ほど総務省情報通信国際戦略局参事官(通信・放送総合戦略担当)室に確認したところ、やはり「直接受信」の部分でプロバイダ経由のオープンなネットサービスであるニコ動やUstは放送法の対象外になるということでした。 #hosoho

追記(2010/05/08):確認したところ「プロバイダ経由」だけが必要要件でした

総務省情報通信国際戦略局参事官(通信・放送総合戦略担当)室に質問した所、放送法改正の「放送」の定義における「直接受信」定義には、プロバイダー経由のオープンなネットサービスは含まれない。
という事ですが、疑問があります。
1.法律にはそんな事書いてありません。
2.「プロバイダー経由のオープンなネットサービス」という説明は何が必要用件か明確ではありません。
3.「プロバイダー経由のオープンなネットサービス」という定義を入れて放送法改正を読むと矛盾があります。
4.「著作権法」にある「放送の定義」とは異なってしまいます。
少し説明します。

1.法律にはそんな事書いてありません

常識は書く必要がありませんが、この定義は明確に書くべきです。書かないのはおかしいです。

2.「プロバイダー経由のオープンなネットサービス」は何が必要要件か明確でない

普通に考えると、この文章はこう読み取るのが普通です。
プロバイダー経由 かつ オープンなネットサービス
つまり、「ニコニコ動画のような、プロバイダーを経由してオープンなネットサービスは放送法の放送における直接受信に含まれない」と取るのが妥当です。
ただ、これで正しい解釈なのかは確認が必要です。
で、問題は「プロバイダーを経由」と「オープンなネットサービス」という言葉の意味です。何を簡単な事をと思われるかもしれませんが、法律でこんな具体的な領域はっきりしない「プロバイダー」とか「オープンなネットサービス」などというカタカナをあまり法律では記載しません。(アホみたいになりますからね)
一般的な説明をすると「プロバイダー」というのは「インターネットに接続するための通信事業者」となります。
もう1つの「オープンなネットサービス」が何を指しているのか私には理解出来ません。ニコニコ動画という例を挙げている事から、ニコニコ動画はオープンなネットサービスだと普通に言った場合は次のように考えます。
「オープンなネットサービス」とは「誰でもが使用できるネットワークを使ったサービス」と考えられます。多分答えた人は深く考えて無いと思いますが、ニコニコ動画は誰でも使えますがアカウントを取る必要のあるサービスですので「誰でも」とも言えないのですが、「オープン」というのを考えると「誰でも」を入れる必要があるように感じます。これも正しい解釈かどうか確認する必要がありそうです。
つまり上記の勝手な解釈により言い換えると次のようになります。
「インターネットに接続するための通信事業者を使った誰でも使用が出来るサービス」となります。前提条件としてニコニコ動画がありますので、「インターネットに接続するための通信事業者を使った誰でも使用が出来る動画共有サービス」と考えるのが妥当です。
それでは、この発言の「プロバイダー経由のオープンなネットサービス」には案件として何が必要なのでしょうか

  1. インターネットに接続するための通信事業者を使用する
  2. 誰でもが使用出来る
  3. 動画共有サービス(含むリアルタイム放送)

すごく限定されています。変です

3.「プロバイダー経由のオープンなネットサービス」という定義を入れて放送法改正を読むと矛盾があります

特に普通の放送でネット配信を行う部分は上の3つの定義を入れても、ほとんどの記載そのものが無意味になっていまいます。

4.「著作権法」にある「放送の定義」とは異なってしまいます。

この放送法改正の中にもある「著作権法の改正」にある「放送法の定義」とも異なってしまいます。正確に言うと、「放送法の冒頭で書いてあるこの放送の定義と、放送法が変える著作権法の中にある放送の定義の解釈が異なってしまうのです」これでは整合性を取るために著作権法まで変更する理由が薄れてしまいます。
これはtwitter上でも質問があって、
bunkatsushinの発言2010/5/6

@kenbor 3月の文化審議会法制問題小委員会で、文化庁の壹貫田著作権課課長補佐は「著作権法上の放送事業者〜の定義につきましても,放送法体系とは異なる趣旨で,著作権法の固有の考え方に基づいて規定」と発言してます。→ http://bit.ly/cR4Mhi #hosoho

@kenbor 今回の改正法案以前からそのような差異がありながら運用されてきたようです。「見直しに伴う通信放送をめぐる事業実態の推移,これらを踏まえた上での引き続きの検討課題」とも発言されており、今後整合性が図られるのでしょうか。それにしてもこの縦割りっぷりは凄いですね。

と書いています。(でもこれって、この話しとは違うような気もするけれど)